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2019-11-11

大切な従業員のためにできること②:両立支援マニュアル等の作成・見直し

2016年12月には「がん対策基本法」が改正されました。

そのなかで

事業主は、がん患者の雇用の継続等に配慮するよう努める

と明記されています。

 

がん治療中の従業員の働き方を整えることは、

会社としての経営課題でもあるのですが、

 

そもそも何から始めたら良いのか?

また、社内に前例がない場合は、

具体的にどのようなことを制度化すればよいか

悩んでしまうかもしれません。

 

 

 

ですが、なぜ今このようなことが起きているのでしょうか?

 

 

それは、医療技術の進歩が「働き方」を曖昧にしたことが上げられます。

 

従来は、長期療養が必要な病気になったら療養し、元気になったら働く、

といったことが、当たり前でした。

しかし、今は、「働く」か「働かない」か、に二極化されていたものから

その間のグレーゾーンを生み出しているのです。

 

具体的には、病気治療は長期入院から通院へと移行したり、

治療期間の短期化、副作用を抑える薬の開発も進み

体の負担が軽減されきております。

 

この変化によって、生活の質が向上し、一定の配慮があれば、

働きながら治療することが可能な人も増えてきているのです。

 

労働力不足が叫ばれる中、

こうした変化は社会にとって望ましいはずなのですが、

現状は、働く環境や社会の意識が追いついていないのです。

 

だからこそ、「人生100年時代に向けて知る」ことが大切になります。

これまで貢献してきた従業員に長く幸せに働き続けてもらえるよう

健康管理に対する考え方やがんについての正しい知識を

従業員に知っていただき、健康に対する意識を向上させ

早期発見・早期対応のための定期検診や職場風土作りの必要性について

前回ではお伝えしました。

 

今回は、従業員の「もしも」の時への体制作りです。

 

 

日本では、毎年新たに100万人以上が、がんと診断されています。

それは新たに誕生する新生児の数より多いことをご存知でしょうか。

 

また、働く世代は、

この1/3と言われており、がんなどの病気とともに働く人が増えています。

あなたの会社でも、今後そうした従業員が増えてくることでしょう。

同時に、従業員の家族が病気となり看護や介護との両立もしかりです。

 

 

これまで組織に貢献してきた従業員ががんと診断され、

治療がひと段落し、また働き続けられる体制を整えることは

新たに人財を探し、雇用して育てる時間、労力、コストと比較しても

持続可能な経営に不可欠です。

 

 

一方で、治療を受けながら働き続けることを希望している

がん治療中の従業員にとっては、「働ける場所」の存在が

非常に大きな役割を担っています。

 

「はやく元気になって以前のようにしっかり働きたい」という強い想いが、

辛い治療を乗り越えるモチベーションになることもあるのです。

 

個人によって病気の進行状況や体調は異なりますし、

働き方の希望もそれぞれ異なることでしょう。

 

しかし、ここで整えておきたいのが、

職場における柔軟な「働き方」の選択肢です。

 

 

 

業務の状況と治療や体調の変化に合わせて、相談しやすい職場環境

整えることで、上司や同僚とチームになって臨機応変に対応する体制を

作っていくことが可能となるでしょう。

 

さらに、もしもの時に大切な従業員を守るために

●両立支援マニュアル

●柔軟な勤務体制

が整えられると、従業員の雇用継続がよりスムーズになります。

 

 

●両立支援マニュアル等の作成・見直しに向けて

―働きやすい職場づくりのヒント―

 

厚生労働省より公表されている

事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」には、

「両立支援の進め方」という見出しがあります(p.10)。

 

一部を抜粋すると以下のような5つの流れになります。

 

①    両立支援を必要とする労働者が、

  支援に必要な情報を収集して事業者に提出

 

※労働者からの情報が不十分な場合、産業医等又は人事労務担当者等が、労働者の同意を得た上で主治医から情報収集することも可能

 

②    事業者が、産業医等に対して収集した情報を提供し、

  就業継続の可否、就業上の措置及び治療に対する配慮に関する

  産業医等の意見を聴取

 

③    事業者が、主治医及び産業医等の意見を勘案し、

  就業継続の可否を判断

 

④    事業者が労働者の就業継続が可能と判断した場合、

  就業上の措置及び治療に対する配慮の内容・実施時期等を

  事業者が検討・決定し、実施

 

⑤    事業者が労働者の長期の休業が必要と判断した場合、

  休業開始前の対応・休業中のフォローアップを事業者が行うとともに、

  主治医や産業医等の意見、本人の意向、復帰予定の部署の意見等を

  総合的に勘案し、職場復帰の可否を事業者が判断した上で、

  職場復帰後の就業上の措置及び治療に対する配慮の内容・実施事項等を

  事業者が検討・決定し、実施

 

ここで記載されている情報をもとにしながら、

それぞれの職場の状況に応じた両立支援マニュアルを用意しておく必要があります。

すでにマニュアルを作成されている会社であっても、定期的な見直しをすることで、

より実践的なマニュアルへと変化させていくことができるでしょう。

 

実際に「どのようなサポートが役立ったか」「どんなことをしてほしかったか」

という情報は、がんサバイバーの経験から学ぶことが可能ですね。

 

具体的な支援方法をマニュアルのなかに含めることにより、

両立を目指す従業員にとって真の意味で役立つ支援体制を整えることができます。

 

こうしたマニュアルを作り、従業員とのコミュニケーションの道具となることで

「両立支援」を歓迎する雰囲気づくりへとつながります。

 

「困ったときは助け合う」という風土が社内に根付いていれば、

誰かが病気になったときも、会社と従業員、上司と部下、同僚などの間で、

良い関係を維持することができます。

 

日頃から良いコミュニケーションがさらに取りやすくなれば、

両立支援や復職の際のフォローもしやすくなるでしょう。

 

 

 

●柔軟な勤務体制で持続可能な体制を整える

 

実際に取り組まれている企業の事例などから

治療と仕事の両立にあたって、あるとよい勤務制度を3つ紹介します。

※事例は、すべて東京都の「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰」(平成26年)された中小企業様になります。

 

①短時間勤務制度

所定の労働時間や日数を一定期間の間、短縮しながら勤務することができる制度を「短時間勤務制度」と呼びます。育児・介護休業制度のなかには、3歳未満の子を養育する労働者からの申し出があった場合に所定労働時間を短縮する(1日の所定労働時間を原則6時間とする)措置が設けられており、この措置を、傷病により休業した社員や、治療と就労を両立したい従業員のために、企業独自の制度として導入している事例があります。

 

〇株式会社トータルケアサービス加島(業種:医療・福祉)

健康上の理由でフルタイム勤務が難しい場合などに、「普通勤務短時間社員」という、最長3 か月まで短時間勤務を認める制度がある。

 

②フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、労働者が一定の期間について総労働時間の範囲内で、始業時刻や終業時刻の調整ができる制度です。働く時間を柔軟に決められるので、治療中の通院等も調整しやすくなることでしょう。

2019年4月からは、フレックスタイム制の清算期間の上限が3ヶ月まで延長されました。これは3か月間のなかで総労働時間を調整できるというものです。これまでは1か月のなかでの調整が必要でしたが、期間が延長されたことにより、身体の回復状況に応じた時間調整もしやすくなります。

 

〇株式会社エム・テック(業種:建設業)

ニーズに応じた働き方として、時差出勤、フレックスタイム、短時間勤務、治療目的の休暇・休業、在宅勤務などを選択できる体制。

 

〇生活協同組合コープみらい(業種:生活協同組合)

療養期、回復期など様々な段階に応じ、復職までの支援の流れを制度化。復職支援制度の他にも、時差出勤制度、フレックスタイム制度、在宅勤務制度、執行通級休暇の積立制度などを明文化。

 

③在宅勤務制度

在宅勤務とは、その名前の通り、自宅等で仕事を行う勤務形態のことを指します。通勤が困難である場合には特に有効な方法といえます。情報提供をスムーズに行える仕組みを社内外に整備すれば、在宅勤務も導入しやすくなることでしょう。

 

〇株式会社松下産業(業種:建設)

がんに罹患した従業員の中には、体調不良のために通勤が難しい人もいた。そうした人が働き続けられるよう、傷病のための在宅勤務制度の活用を可能とした。

 

先に挙げた、『株式会社エム・テック』、『生活協同組合コープみらい』でも「在宅勤務」が導入されている様子が伺えました。

東京福祉保健局で公開されている「東京都職域連携がん対策支援事業」で挙げられている企業の取り組み事例を閲覧すると、平成27年、28年、29年と年を追うごとに、「在宅勤務」のキーワードが増えていることが分かりました。

新しい働き方としての「在宅勤務」は、今後も様々な企業で検討・導入されていくことが予想されます。現時点ではまだ多くの企業で導入されているとはいえない「在宅勤務」ですが、がん治療と仕事の両立支援について考えていくうえでは、なくてはならない働き方のひとつといえるのは確かです。

 

そうはいっても、すぐに勤務体制を見直せる状況ではないかもしれません。

ですが、導入が難しいわけではありませんし、メリットを感じている企業が多いのも事実です。

手放したくない従業員の雇用の継続と能力の発揮にもつながる制度でもあります。

 

 

2人に1人が、がんと診断される時代です。

「もしも」は意外とすぐに訪れるかもしれません。

まずは、できるところからはじめてみませんか。

 

それは、あなたにとっての大切な従業員が安心して働き続けられる

信頼という絆をさらに深めることになるでしょう。

 

 

 

 

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