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2019-12-19

キャリアコンサルティングのいま―正しい知識で実践的な支援を行う―

公式に発表されている情報では、2019年11月末の時点で、キャリアコンサルタントの登録数は47,459名とされています。

キャリアコンサルタント登録者数(2019年11月末時点)

 

登録している各キャリアコンサルタントの得意分野は検索システム(キャリコンサーチ)で検索することができますが、全地域を対象に「両立支援」を得意分野としている方を検索してみたところ、その数は僅か190名でした。厚生労働省の研修を受けて「両立支援コーディネーター」となった方も、この人数に含まれているため、実際の登録者がどの程度までキャリアコンサルティングに関わっているかという点には、個人差があるのが現状です。

 

 

キャリアコンサルタントのいまを知る

【活動状況について】

独立行政法人労働政策研究・研究機構が公開している労働政策研究報告書No.200では、キャリアコンサルタントの現状についての調査結果がまとめられていました。

 

キャリアコンサルタントを専業としている割合は約2割。最も多かったのは、キャリアコンサルティングに関連する活動以外で主な生計を立てている人で、約4割を占めていました。属性としては年齢に偏りがあり、40代以上の中高年が多く、30代以下の若年層は少ないということも報告されています。勤務をしながらキャリアコンサルティングに携わっている場合は大企業に多く、中小企業には少ないという実態も明らかとなっていました。

 

活動領域について】

キャリアコンサルタントの活動領域として、当初は、企業や学校、需給調整機関(ハローワークなど)・地域の4つの領域が中心に考えられていたようですが、現状では、うつ病等の「精神障害」や、「発達障害」を含む障がい者の就労支援や職業相談なども多いことが分かっており、がん患者や難病患者の職場復帰や就労支援などもニーズも高まっていることが示唆されています。生活困窮者の主労支援や、ひとり親、依存症者など、様々なケースがありますが、広い意味では「医療・福祉」の領域における活動が求められている傾向が明らかとなりました。

 

キャリアコンサルティングについて知っておきたいこと

キャリア形成における支援を求めるニーズが増えているのに対し、キャリアコンサルティングを専門的に扱う人材はまだまだ不足しているのが現状です。

 

もっと言ってしまえば、キャリアコンサルティングという分野そのものが未だ発展途上である、という事実を理解しておく必要があります。

 

ここでひとつ、質問したいと思います。

「実はがんなんです・・・」と相談や告白をされたとき、あなたはキャリアコンサルタントとしての自覚を持ち、相談者に対する適切な傾聴や支援を行う自信はありますか。

 

キャリアコンサルティングを専業としている場合は、第三者として組織と個人を繋ぐことも多いため、当事者本人から、職場の上司に言えないことへの悩みや家族への想いを聞くことができます。仕事と関連する様々な話に耳を傾けることではじめて、当事者が抱えている本当の悩みや不安を知ることになります。

 

しかし、企業内の人事担当者や管理者としてキャリアコンサルタントの資格を取得した場合は、周囲(知り合いや同僚)からの相談を受けることも増えてきています。キャリアコンサルタントとしての経験が浅い場合、相談者からの突然のカミングアウトに戸惑ってしまうことも多いようです。企業内の研修や人材育成に関わっていると、人事担当者や管理者から、治療と仕事の両立支援に関する相談を受けることもありますが、突然の相談に対応しきれず困ってしまうこともあるようです。

 

専門家として積極的に「両立支援」に関わることが求められているわけなのですが、それに対応できず戸惑うケースが報告されています。

 

キャリアコンサルティングにおける専門的な知識は「知っておけば何かのときに役立つ」という予備的なものではなく、「いつでも対応し、解決策を提案できる」という実践的なものであるべきです。そのためには、両立支援に関する様々な情報を、自分のなかで日々アップデートしていく必要があります。

 

2人に1人が「がん」にかかるかもしれない時代においては、今後ますます治療と仕事の「両立支援」がキーワードとなってくることが予想されます。

就労支援や職業相談、両立支援など、ひとりひとり状況が異なる個別性の高い支援を行うためには、キャリアコンサルタント自身に高いスキルが求められます。

相談者の心に寄り添うことに加え、支援活動の関連機関との連携をスムーズに行うコミュニケーションスキルも求められています。

これまで以上に、よりレベルの高い連携・協働のスキルが求められているのが「両立支援」という領域なのです。

 

専門家として今こそ、現場で起こっていることを知っておいていただきたいと感じます。

 

キャリアコンサルタントとしての両立支援へのはじめの一歩

キャリアコンサルティング技法とは?

厚生労働省のウェブサイトでは「キャリアコンサルティング技法(ツール)」の情報を公開しています。このツールは、キャリアコンサルタントおよびキャリアコンサルティングの質的向上を図るために開発されたものです。

 

〇治療と職業生活の両立支援

〇就職氷河期世代の労働者への支援

という2つが大きなテーマとなっています。

 

今回は「両立支援」に焦点を当ててご紹介していきます。

 

【両立支援について】

治療と職業生活の両立支援では、様々な関連機関と連携することが求められます。

病気になっても働きたいと考える個人(相談者)と、医療機関や行政機関、産業医や産業保健スタッフ、人事担当者、相談者の職場の上司や同僚など、様々な人々が存在する環境に入って、中から支援を行いチームの一員として動く必要があります。

 

医療(治療の選択・決断)とキャリア就労(どう生きるかどう働くか)の間で悩む相談者に適切な支援していくためには、

〇自分を知ること

〇現状を知ること

〇キャリアの再構築に繋がる質の高い支援

の3つが求められています。

 

 

キャリアコンサルタントとして押さえておきたい基本事項

キャリアコンサルティング技法に関する資料では、支援を行うにあたっての基本姿勢や各種ツールを確認することができます。

 

・キャリアコンサルタントマインドチェックシート

・相談者との関わり方チェックシート(p14)

で、留意すべき事柄や傾聴の姿勢など、確認しましょう。

 

また、両立支援におけるキャリアコンサルティングを始める前に「知っておきたいこと」「注意しておきたいこと」を確認できるように情報が分かりやすくまとめられていますので、動画や報告書を参考書として手元に置いておくことをおススメしたいと思います。

 

両立支援に必要なツールもpdf形式でダウンロードできるようになっています。

・両立支援ナビシート

・4Sヒアリングシート

・両立支援モニタリングシート

・不安ごと見える化マップ

・職場における配慮のためのヒアリングシート

・相談シート

など、様々なワークシートが用意されています。

クライアントのニーズや状況に応じて、ご活用いただけます。

 

 

両立支援に向けての対応について

「両立支援」においては、相談者個人に合わせたきめ細やかな対応が求められています。

相談事例をもとに分かりやすくまとめられた動画が閲覧できますので、こちらも参考にしていただけると幸いです。

※動画はこちら    

 

インテーク面談でのキャリアコンサルティング基本となるポイントとして、以下が上げられています。

 

■相談者との信頼関係を構築できるように心がけましょう。

■目の前の相談者の心を理解し、話しやすい環境を整えましょう。

・相談者のありのままを受け止める

・相談者のペースに合わせる

・病気の話が出ても動じない

・医療についての専門家ではないことを自覚する

■相談者の自己探索(内省)を支援しましょう。

・悩みの原因を知る

・相談者の気持ちが表現される言葉をつかみ取る

・想いを受け止め、相談者のありたい姿を知る

■意思決定や行動の支援をしましょう。

・相談者自身が抱え込んでしまっていた問題に気づくための手助け

・相談者自身がこれからどうしていきたいかを引き出す

 

 

これからの時代に必要なのはテーラーメードの両立支援

病気、介護、子育てなど、様々な場面で柔軟に働き方を変えていくことになるでしょう。

人生100年時代と言われる中、介護や育児との両立だけでなく、今後ますます当たり前に必要とされてくるのが「治療と仕事の両立支援」なのです。

 

今回は「治療と仕事の両立支援」を主なテーマにご紹介しましたが、キャリアコンサルタントとして何ができるのかを常に考え、スキルを向上させるための努力を怠らないようにしていきたいですね。そして、目の前の相談者の心を深く理解し、相談してくださった方が不安や悩みと向き合いながら「自分らしさ」や「自分らしい生き方」を取り戻せるような、温かい支援ができるようにしていきたいと感じます。

 

キャリアコンサルティングはまだまだこれからの分野です。

 

支援が必要な方にいつでも手を差し伸べることができる実践的なキャリアコンサルタントが、企業内にも個人としても増えていくことを、心から期待しています。

 

◎参考資料

・キャリアコンサルタントとは

https://www.nipponmanpower.co.jp/cc/about/

・キャリアコンサルティングとは

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/career_consulting.html

・厚労省:キャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/career_consulting_gihou_00004.html

両立支援コーディネーターという厚労省の研修を受けただけという方が大半なところが実情

 

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