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2019-11-07

社会との繋がりは治療のプラスになる:自分にとって働くとは?(後編)

今回も前回に引き続き、

がんサバイバーの方の実体験から学びや気づきを深めていきます。

前回ご紹介した2人目の方(金澤さん)は、

ジャパン・キャンサー・フォーラム2018(JCF2018)でお話をされました。

ジャパン・キャンサー・フォーラム(JCF)は

「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」ことを

目的とした日本最大級のがん医療フォーラムとして毎年開催されています。

登壇者の方々の経験に基づくお話は、

これから病気と向き合おうとされているすべての方、

さらに働く世代のみなさまに勇気を与えてくれることでしょう。

こちらで講演された内容はJCFのウェブページやYoutubeで公開されていますので、

実際にお話しされている様子もぜひ一度ご覧いただければ嬉しく思います。

(参考情報)

CancerChannel あらゆるがん医療情報を動画で視聴できるチャンネル

がんサバイバーの実体験から学ぶ!

今回ご紹介する4名の方々も、JCF2019でお話をしてくださったがんサバイバーの皆さんです。

おひとりおひとりがどのような状況で治療と仕事の両立に取り組まれたのかについて、

簡単にご紹介していきたいと思います。

がんサバイバーの「声」その③: 再就職との向き合い方

●職業:事務関連

●疾病:乳がん

●治療中の勤務状況:

・30代は2度の乳がんを経験。同時期に母親の介護(9年間)が重なってしまう。

・38歳で失業と同時に再発。介護をしながら弱音を吐けないという状況が続いた。

・再就職をするも1つ目の会社は体調を崩し1か月で退職。

 その後、新たな再就職先を見つける。

●当事者の立場から:

・がん・闘病・介護が重なった30代。がんについてのマイナスな印象を自分が

 持ってしまっていたので、人にうまく伝えられなかった。収入面で不安もあり、

 とにかく仕事がしたいと思っていた。

・再就職時、面接官にマイナス印象を与えることが不安だったため、

 病気のことを詳しく伝えなかった。

 職場で「大丈夫?」と聞かれても「大丈夫です」と答えていた。

 しかし、仕事を始めて1か月ほどした頃に倒れてしまう。

 体調のことを考え退職することになったが、「働くのはまだ早かったかな」と

 言った社長の一言が突き刺さった。

・再再就職先のための面接時には、自分の状況を詳しく伝えるようにした。

 状況(体調、通院など)をきちんと伝え、

 自分自身の「がん」に対する意識を変えた

・がんに罹患しても働きたいという気持ちを素直に伝えることができるように。

 家族や友人、働ける場所、あたりまえのことが幸せに感じられるようになった

 「一人で頑張りすぎず頼り上手な女」を目指そうと思う。

 昔の自分には「気を楽にしてゆっくりいこうよ」と伝えたい。

菊池 かおり氏 『私の再就職への道

がんサバイバーの「声」その④: がんサバイバーの就職と治療と仕事の両立

●職業:

TV制作会社に所属しTV局に派遣されている福岡ローカル情報番組のディレクター

5年目。

●疾病:急性骨髄性白血病 大学2年生の時に罹患。

●治療中の就労状況:

治療時は大学生だが、就職後も通院治療が必要だった。

徹夜も多く休みがとりづらい状況。

2か月に1度の通院のはずが1年以上いけなかったこともあり、危機を感じた。

●当事者の立場から:

・がんサバイバーの就職に関する情報がなく、就職時にも大変な苦労があった。

 就職がなかなか決まらずにいたが、卒業する年の冬ごろTV制作会社の社長から、

 自分の病気を分かったうえで声をかけてもらった

・制作会社から局に派遣という形だったので、派遣先に病気のことを伝えたり

 通院のための配慮をお願いしたりすることを迷った。番組プロデューサーだけ

 に病気のことを話しており、通院の希望も伝えていたが、実際は難しい状況。

・新人で仕事を断りづらく、平日午前の外来は通いづらい。

 しかし、自分の身体のことは自分しか分からないので、

 「自分の身は自分で守る」と次第に思うようになった。加えて

 「周囲の配慮に対して感謝の気持ちを忘れない」ことが大切だと気づいた。

 自分の業務を誰かが代わりに負担をしてくれているという意識が大切。

・はじめに病気のことをオープンに相談できる人を作っておくべきだったのでは?

 と反省。相談しやすい雰囲気づくりが必要である。

蒔田 真弓氏 『働くサバイバーが考える仕事との向き合い方

がんサバイバーの「声」その⑤:治療中の会社からの配慮について感じていること

●職業:海外駐在員を経て帰国。

●疾病:直腸がん(肝臓に転移あり)現在も治療中

●治療中の就労状況:

 海外駐在中にがんに罹患。帰国して治療をした後、職場復帰。

●当事者の立場から:

・通院治療を繰り返す必要があった。

 しかし、有給休暇には上限があり、通院のために休暇過剰分が発生すると

 欠勤扱いとなり、賞与控除や昇給、昇進等の人事査定に影響があることに悩む。

「保存休暇」の適用が可能かどうかを尋ねるも、会社では適用できないと言われた。

 (※保存休暇とは、有給休暇の年度未消化分の一部を積み立て休暇として振り替えた休暇のこと

 法律で定められているものではなく、就業規則等に定めることで会社が独自に設置できる休暇制度)

 その後、社内の保存休暇制度が改訂され、この制度を活用できるようになった。

・会社からは治療優先を強調されており、業務内容もこれまでと変わり

 負担の少ないものへと変更された。部署も異動。配慮はありがたく

 感謝しているものの、仕事へのモチベーションが下がってしまう。

・「働くことで今を生きている証にしたい」という気持ちが強かったので、

 やりがいのある仕事をもっとしたいと思っている。

 今後は、待遇改善を新たな取組課題として、進めていきたい。

 使ってもらえるように自己申告制度を活用してアピールしていきたい。

安宅山 正雄氏 『がん治療と仕事の両立(支援制度充実と待遇改善に向け)

がんサバイバーの「声」その⑥:職場復帰後の難しさと努力の必要性

●職業:製造業

●疾病: 線様嚢胞がん(上咽頭)→ 骨への多発転移

●治療中の就労状況:1度目のがん罹患で治療を受け、1か月後には復職。

          しかし1年後の検査で骨への多発転移が発覚。

●当事者の立場から:

・製造業という仕事柄、背中や腰に強い負担がかけられないということもあり、

 再発時は職場に正直に報告すべきか悩んだ。現場で使い物にならないのでは…

 と考えてしまった。会社に伝えたところ理解が得られ、これまでと異なる

 パソコン中心の業務へと配慮してくれた。

・職場復帰をしてから、周囲に迷惑をかける罪悪感に駆られてしまったり、

 周りに助けを求めても他人事のように対応されている、と感じたりするように

 なり悩む。職場復帰をしてから仕事も人間関係もうまくいかないという状況。

 次第に、自分にとっての「仕事」は収入を得るだけでなく生き甲斐だと気づく

・周囲の理解と配慮がなければ働き続けることは難しいので、

 「自分自身から発信しなければ」と思った。

 がんに罹患した自分に必要以上に気を遣ってくれていたことや、業務を

 どの程度負担してもらえそうかが分からず周囲が戸惑っていたことを知る。

 できること・できないことを伝えずに無理をして苦しくなっていたこと

 に気づいた。「無理は自分を苦しめる。

 「自分自身が心を開かなければ誰にも理解してもらえない

働き方を工夫すれば立派に働くことができる

 自分でも発信し、周りにも助けてもらいながら、頼りやすい環境に変えて

 いくことができた。理解・配慮をしてくれた会社や周囲への感謝の気持ちを

 忘れずに「恩返し」がしたいという気持ちで仕事も治療も頑張っていきたい。

山本 翔太氏 『思いやりのある優しい社会を目指して~理解と配慮を求める勇気

がんサバイバーから学ぶ、治療と仕事の両立に必要な3つのポイント

ご紹介した方々は「治療と就労」について

たくさんの悩みを抱えながらも、前向きに取り組んでおられました。

これまでにご紹介した皆さんのお話から学んだ、

治療と仕事の両立のための3つのポイントをまとめていきたいと思います。

 

ポイント① 自分の状況をできるだけ詳しく伝える

現在の身体の状況や治療内容、通院の頻度など。

様々な情報をできるだけ詳しく伝えておくことが大切です。

事前に申告しておくことで、会社側への対応もお願いしやすくなります。

ポイント② できること・できないことを伝え、無理をしない

自分ができる仕事、できない仕事を整理して伝えると、

適切なフォローを受けやすくなります。

無理をせず、しかし「できること」は明らかにしつつ、

仕事へのやる気を維持できるとよいでしょう。

ポイント③ 感謝の気持ちを忘れない

支えてくれる周りの人々への感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。

遠慮や我慢をするよりも、必要なフォローをお願いし、

感謝を伝えるようにするだけで、周囲の理解も得やすくなり、

自分にとっても周りにとっても働きやすい環境を整えることができます。

自分の想いを伝えるだけでは適切な支援が得られない・・・

と感じたときは、

両立支援を専門としているキャリアコンサルタントなどに

に相談をすることもできます。

また、各都道府県に設置された

「産業保健総合支援センター」「ハローワーク(長期療養者支援)」

などで相談することも可能です。

実際に会って話してみることで、見えてくることがあります。

人との相性もありますので動いてみられると良いでしょう。

こうして得られた信頼できる多様な専門家とのつながりは

治療と仕事を両立する上でも、これからを乗り切る上でも安心です。

自分らしく働き続けられるよう、あなたに必要な体制を整えていきましょう。

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